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漫画「水は海に向かって流れる」のあらすじ・ネタバレありの考察・感想。人間関係の中にある「謎」を探る人間関係ミステリー

ごらく
ごらく

映画化された「子供はわかってあげない」の作者田島列島さんの作品「水は海に向かって流れる」。マンガ大賞2020で5位、マンガ大賞2021で4位にもなりました。

この作品が傑作。大好きです。「子供はわかってあげない」も「田島列島短編集 ごあいさつ」も読みましたが全ておすすめ。

マンガ大賞で見かけた印象と内容がいい意味で違いました。印象は「爽やかな作品なのかな」と(勝手に)思っていたのですが実態は「なんか、重いテーマだけど、面白い!」という感じでした。

あらすじをすこしだけ紹介します。

「水は海に向かって流れる」を読む

「水は海に向かって流れる」のあらすじ

物語は高校生の男の子が、雨の中誰かを待つシーンからはじまります。

誰かを待っていた男の子は「直達くん」。突然女性に声をかけられます。

背景がきれいです。注目すべきはこのお話のタイトル「雨と彼女と贈与と憎悪」。闇が深いタイトルです。

直達くんは、突然迎えにきたのが自分の叔父ではなく、おねえさんだったところから怪訝な表情。

叔父とおねえさんの関係性を疑いながら、歩き出すのです。

 

水は海に向かって流れる」の魅力はこの絵のタッチと、不穏な空気の中にやさしさがある雰囲気。絵はマイルドでソフトな印象なのですが、タイトルが「雨と彼女と贈与と憎悪」。1話目でこの少年とおねえさんの間にある関係性が明かされます。

 

ネタバレなしのあらすじはここまで。「水は海に向かって流れる」は3巻で完結。とてもおもしろいのでぜひ読んでみて下さい。

このさきはネタバレありの感想・考察をポイントで紹介したいと思います。

「水は海に向かって流れる」を読む

水は海に向かって流れる」のネタバレありの考察・感想。

ここからはネタバレありの感想、考察を。

まだ読んでない人はできれば読まないでください。

この作品は「人間関係ミステリー漫画」だから面白い。|漫画「水は海に向かって流れる」の感想・ネタバレありの考察①

読み返していて思ったのは「考察ができないな」ということ。

感想として思いつくのは人物描写や人間関係について。それもそのはずで、この作品は「日常漫画」だと思っていたのですが、よく見ると「人間関係に謎が多い。その謎が時が進むにつれて明かされていく」というミステリーにとても近いつくりだったからです。(公式では「ボーイ・ミーツ・ガール」と題されています)

ミステリーって基本的に「謎が明かされていく面白さ」なので、考察は出にくい。読み返していたときに「この作品はなぜ面白いのか?」という謎が解けてとてもすっきりしました。

そして、その謎は「主人公の直達くんと榊さんが「親の不倫」にどう向き合えばいいのか」という答えのない謎。「事件」を軸にするのではなく「人間関係」を軸にしている点が、普通のミステリーとちがう魅力を醸しています。

(「千と千尋の神隠し」の考察でも同じようなことを書きましたが、もしかしたらこの物語も「二人の出会いを通じた成長の物語」といえるかもしれません)

暗いけど、細かいウィットが面白い。|漫画「水は海に向かって流れる」の感想・ネタバレありの考察②

この作品の主題は、基本的に「直達くんの親が、榊さんの母親と不倫して去っていった男」という、ネットマンガだと胸糞っぽい展開になりえる設定なのですが、この作品には「悪意」がないので、もやっとするけど不快感はありません。

しかも、あらすじで紹介した単話のタイトルや登場人物の描写・展開などくすりと笑える細かいウィットに富んでいるので「心が揺れたけど爽快感があった」というすごく快適な読後感を提供してくれるのです。このバランスが傑作たる所以だと思います。

登場人物、全員すてき。|漫画「水は海に向かって流れる」の感想・ネタバレありの考察②

登場人物が全員個性的で、すてきです。

(多分、現実の東京にはない)シェアハウスには大学教授、OL、漫画家とその甥、占い師と不思議な住民が集います。登場人物それぞれに物語がつくれる密度です。(シェアハウスの住民ではありませんが、今作の登場人物の物語が「子供はわかってあげない」で描かれています)

中でも、教授はレヴィ・ストロースを語る文化人類学的側面を持っていて私にとっては学問的興味の一致を感じつつ、教授のドライさも好きです。占い師の妹、直達くんのクラスメートである泉谷さんは可愛いうえにたくましさも兼ね備えていて素敵。この二人が私はけっこう好きです。

榊さんは、心に大きなキズがある。|漫画「水は海に向かって流れる」の感想・ネタバレありの考察③

榊さんは話の最初から大人らしく振る舞っているのですが、「大人だから」「子どもに罪はないから」「怒ってもどうしょもないことばっかりじゃないの」と、悲しげな発言を連発するところに、諦めようとしているものの、諦めきれない大人の悲哀があります。

(榊さんは普通に過ごしているように見えますが、その実直達くんは中身を見透かしています)

母親の不倫に対して恥を感じている榊さんは、自身の恋愛に対しても消極的で、私は恋愛をしないとまで言っています。親の不倫というのは子どもに大きな傷を与えるものなんだと、「直達くん」という存在は、決して単なる「母親を奪った相手の子ども」という存在なのではなく「自分の恥を思い出させる存在」として苦悩しているんだと感じました。

直達くんかっこいい。|漫画「水は海に向かって流れる」の感想・ネタバレありの考察④

一方、実父の不倫のせいで榊さんとの関係に悩む直達くんは、学校の人気者泉谷さんと親しくなり「なにか俺にできることあったら言ってね」とやさしく声をかける”たらし”っぷりを見せてくれます。(榊さんにもやさしく振る舞います)

そしておじさん、榊さん、実父に対してもナチュラルに振る舞い、対等に接する彼はとてもかっこよく、魅力的です。(榊さんと接するときだけは少し動揺する姿を見せます)

中でも、おじさんに真実を打ち明ける役目を渡せと榊さんに詰め寄られるシーンで、勇気を持って榊さんと向き合うシーンは最高です。

俺はやだ そーゆうのやだ

もう 知らないフリはしたくない

けど

わがままを言ったら捨てられる…

(捨てられるって 誰に?)

「俺は そーゆうのやです!」

わがまますら言えないコドモのままじゃ 目の前のこの人が背負うモノを半分持つこともできない

(「水は海に向かって流れる」1巻 P190より)

直達くんの、戸惑いながらも勇気を持って正面から生きる姿には、ニートの兄弟が過ごす日常漫画「働かないふたり」(Kindle Unlimitedで5巻まで無料)のお兄ちゃんを思い出します。直達くん美術部だし。かっこいい。

 

以上、すごくざっくりとした感想ばかりでしたが今回はここまで。

ちなみに「田島列島短編集 ごあいさつ」「水は海に向かって流れる」「子供はわかってあげない」は似たような世界線なので、1シリーズでも読んだ方は他の作品もぜひ読んでみてください。

出典:「水は海に向かって流れる(田島列島・週刊少年マガジンコミックス)」Amazonより

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